ダイヤモンド相場は10年でどう動いた?金との比較で見る資産性と今後の見通し
ダイヤモンド相場推移10年データで検証
金と比較して資産価値はあるのか?
「ダイヤモンドは資産になるのか?」——この問いに、明確なYes/Noを出せる人は多くありません。金(ゴールド)のように国際的な公示価格があるわけでもなく、株式のようにリアルタイムでチャートが更新されるわけでもない。だからこそ、多くの人が判断を保留したままになっています。
本記事では、ダイヤモンドの卸売価格指標であるRapaport価格やIDEXダイヤモンド指数などのデータをもとに、2015年〜2025年の10年間で相場がどう動いたかを整理します。さらに、金やプラチナとの比較、資産として「アリ」になる条件と「ナシ」になるケースの境界線まで踏み込みます。
「結局、買うべきなのか?」「どんな石なら後悔しないのか?」——記事を読み終えたとき、その判断軸が明確になることを目指して解説します。
1ダイヤモンド相場の直近10年間(2015〜2025年)推移
ダイヤモンドには金のような「統一された国際価格」がありません。そのため、業界では主に以下の2つの指標が参照されます。
- Rapaport Price List(ラパポート):週次発行。ダイヤ業者間の卸売ベンチマーク価格。
- IDEX Diamond Index:取引実勢に基づく指数。市場の温度感を見やすい。
以下は、ラウンドブリリアント 1ct / G-H / VS クラスのUS$ベースの推移を簡略化したイメージです。円建てではさらに為替の影響が加わります。
チャートから読み取れるポイントは大きく3つあります。
- 2015〜2019年:ダイヤはUSドルベースで緩やかに下落。中国景気減速やデビアスの価格調整が影響。
- 2020〜2022年前半:コロナ禍→リベンジ消費で急騰。2022年前半には2015年比で+20〜25%水準に到達。
- 2022年後半〜2025年:利上げ・景気後退懸念・ユーズドダイヤモンドの普及・トランプ関税で反落し、ほぼ2015年水準に回帰(ラボグロウンの影響は軽微とされる)。
一方の金(ゴールド)は、同期間で約2〜2.5倍に上昇しています。円建てではさらに円安効果が加わり、体感リターンの差はより顕著です。この対照的な動きが「ダイヤモンドの資産性は相対的に低いのでは?」という声の根拠にもなっています。
| 年 | ダイヤ 1ct G VS1 (USD目安) |
前年比 | 金 1oz (USD目安) |
前年比 |
|---|---|---|---|---|
| 2015 | $5,800 | — | $1,160 | — |
| 2016 | $5,300 | ▼9% | $1,250 | ▲8% |
| 2017 | $5,100 | ▼4% | $1,290 | ▲3% |
| 2018 | $5,000 | ▼2% | $1,270 | ▼2% |
| 2019 | $4,800 | ▼4% | $1,510 | ▲19% |
| 2020 | $4,400 | ▼8% | $1,800 | ▲19% |
| 2021 | $6,300 | ▲43% | $1,740 | ▼3% |
| 2022 | $7,200 | ▲14% | $1,760 | ▲1% |
| 2023 | $5,700 | ▼21% | $1,970 | ▲12% |
| 2024 | $5,300 | ▼7% | $2,350 | ▲19% |
| 2025 | $5,500 | ▲4% | $2,500 | ▲6% |
※ 上記は各種業界レポート・指標をもとにした概算値です。個別の石のグレード・形状・鑑定機関により実勢価格は異なります。
2直近10年でダイヤモンド相場に大きな影響を与えた5つの要因
10年間の価格推移を動かした背景には、需要・供給・テクノロジー・地政学・為替の5つの要因が複雑に絡み合っています。ここではそれぞれを時系列で整理します。
中国・インド需要の変動
2015年以降の中国景気減速で需要が鈍化し、価格が下押しされました。一方、2021年にはインドの婚礼需要やアメリカの消費回復で急騰。需要の偏りが価格ボラティリティの主因です。
コロナ禍と「リベンジ消費」
2020年前半は鉱山操業停止で供給が急減しましたが、後半から2022年にかけて先進国のリベンジ消費で価格が急騰。その反動が2022年後半〜2023年の急落につながりました。
トランプ関税の影響
2024年からトランプ政権により相互関税が引き上げ。特にインド→アメリカは関税率が50%になるなど、ダイヤモンドの輸出入に滞りが発生。取引の成立件数減→価格の低下要因となっています。
ロシア制裁と供給構造の変化
世界最大のダイヤ原石供給元であるロシア・アルロサ社への制裁(2022年〜)は、供給量の縮小を意味します。しかし、間接的な流通が続いているとの指摘もあり、価格への影響は限定的でした。
円安・ドル高と日本国内価格
ダイヤモンドはUS$で取引されるため、円安になると日本国内の販売価格は上がります。2022年以降の急激な円安は、USDベースで下落していても「円建てでは横ばい〜微増に見える」という錯覚を生み出しました。
「国内小売価格が上がっている=ダイヤの資産価値が上がっている」とは限りません。為替と小売マージンの上乗せ分を切り分けて見る必要があります。また、ユーズドダイヤモンドの構成比増の影響が大きいといえるでしょう。また天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドは顧客層が異なるという点から、下落要因とはみなされていない傾向にあります。
3ダイヤモンド相場が「分かりにくい」3つの理由
金であれば、テレビのニュースで「本日の金価格は1g=○○円」と報じられます。しかし、ダイヤモンドではそうした体験がほとんどありません。なぜでしょうか?
為替(円安)とインフレによる影響
ダイヤモンドの国際取引通貨はUSドルです。たとえば2015年に$5,800だった1ctの石が2025年に$5,500に下がっていても、同期間で1ドル=120円→150円に円安が進んでいれば、円建てでは約69.6万円→82.5万円と「値上がりしたように見える」現象が起きます。
※ これは為替による価格変動であり、ダイヤ自体の価値上昇ではありません
インフレの影響も同様です。物価が上がれば宝飾品の小売価格も上がりますが、それは「ダイヤの資産価値が上がった」のではなく「通貨の購買力が下がった」だけという側面があります。
産出国・供給量の変動と地政学リスク
ダイヤモンド原石の主要産出国はロシア、ボツワナ、コンゴ民主共和国、カナダ、オーストラリアなど。これらの国で鉱山閉鎖・政治不安・制裁が起きると、供給が急変します。
供給サイドの変動は「予測しにくい」のが特徴で、株式や金のように定量的に先読みするのが困難です。
合成ダイヤモンド(ラボグロウン)の天然価格への影響
2018年にデビアスがラボグロウンブランド「Lightbox」を立ち上げたことが象徴的でした。合成ダイヤの価格は急落を続けており、2025年時点で天然の1/10以下のケースもあります。
- 天然ダイヤ:約$5,000〜6,000(Rapaport参照)
- ラボグロウン:約$300〜800(急落トレンド継続中)
合成ダイヤの価格下落が続く限り、小粒・低グレードの天然ダイヤほど価格競争の影響を受けやすい構造にあります。
ただラボグロウンは生成過程に倫理的課題(環境汚染など)があり、天然ほど市場から受け入れられていない傾向にあるようです。Z世代も買うなら天然という声が多いというデータもあり、業界的には工業用として認識されるケースが多い様子です。AIを用いたステルスマーケティングも顕著にみられ、実態との乖離が生じているといえるでしょう。
4金(ゴールド)やプラチナとの違い
実物資産としてダイヤモンドを検討するなら、金やプラチナとの比較は避けて通れません。以下の表で、資産としての主要な評価軸を一覧にまとめます。
| 比較項目 | 💎 ダイヤモンド | 🥇 金 | ⬜ プラチナ |
|---|---|---|---|
| 公示価格 | なし(業者間指標のみ) ✕ |
あり(国際市場で秒単位) ◎ |
あり(国際市場で秒単位) ◎ |
| 流動性 | 低い(売却先が限定的) △ |
非常に高い ◎ |
高い ○ |
| 売買スプレッド | 大きい(小売⇔買取で30〜60%の差も) ✕ |
小さい(数%程度) ◎ |
小さい(数%程度) ◎ |
| 10年リターン (USD建て) |
約▲5%〜±0% 横ばい |
約+100〜150% 大幅上昇 |
約▲10〜+20% 不安定 |
| 保管コスト | ほぼゼロ(小さい・劣化しない) ◎ |
貸金庫・保険が必要 △ |
貸金庫・保険が必要 △ |
| 可搬性 | 極めて高い(ポケットに入る) ◎ |
重い(1kg=約1,500万円) △ |
重い △ |
| 匿名性 | 高い(登記不要) ○ |
取引時に本人確認あり △ |
取引時に本人確認あり △ |
| 税制 | 売却益は譲渡所得 △ |
売却益は譲渡所得 △ |
売却益は譲渡所得 △ |
「体積あたりの価値密度」ではダイヤモンドが圧倒的です。1ctのダイヤは直径約6.5mm・重さ0.2g。数百万円の価値がポケットに入る資産は、有事の持ち出しや海外移転の観点で他にありません。
しかし、最大の弱点は「売買スプレッドの大きさ」と「流動性の低さ」です。宝飾店で100万円で買った石を、同日に売ろうとすると40〜60万円程度にしかならないケースは珍しくありません。これが「資産にならない」と言われる最大の理由です。
※ 購入価格に対する売却時の目減り率目安。ダイヤは購入チャネル・グレード・鑑定書の有無で大幅に変動
つまり、ダイヤモンドを資産として検討する場合は、「この目減り分を上回るリターンが見込めるか?」あるいは「保有することの心理的・物理的メリットがスプレッドを許容できるか?」——この2点を冷静に判断する必要があります。
5ダイヤモンドを資産として持つメリット・注意点
ここまでの分析を踏まえると、ダイヤモンドは「万人にとっての投資商品」ではないが、特定の条件を満たせば資産性を発揮するポテンシャルがあると整理できます。
✅ メリット(資産として「アリ」になる側面)
- 体積あたり価値が最高クラス。可搬性◎
- 劣化しない。物理的な保管リスクが極めて低い
- 保管コストがほぼゼロ(貸金庫不要)
- 登記・届出が不要で匿名性が高い
- 大粒・高品質石は希少性が上がり続ける構造
- インフレ・通貨危機時の最終的な価値保蔵手段
⚠️ 注意点(「ナシ」になりやすいケース)
- 売買スプレッドが極めて大きい(特に小売購入時)
- 公示価格がなく、適正価格の判断が難しい
- 短期リターンはほぼ見込めない
- 売却チャネルが限定的(すぐに現金化しにくい)
- 鑑定書の質・グレーディングの差で価値が変わる
「資産性を落としにくい」ダイヤモンドの条件
上記のメリット・デメリットを踏まえ、もし資産としてダイヤモンドを保有するなら、以下の条件を満たす石を選ぶことが重要です。
💎 資産性ダイヤモンド 7つのチェックリスト
-
カラット:1ct以上、理想は2ct以上
大粒ほどラボグロウンとの差別化が効き、希少性プレミアムが乗る。 -
カラー:D〜Fカラー(無色)
Gカラー以下は資産性の観点では大きくプレミアムが落ちる。 -
クラリティ:VVS2以上
VS1以下は品質の客観的評価でばらつきが出やすい。 -
カット:Excellent(トリプルエクセレント推奨)
輝きの要。リセール時にもカットグレードは最重視される。 -
鑑定機関:GIA鑑定書つき
国際的に最も信頼度が高い。AGLやCGLも国内では有効だが、海外リセールを考えるとGIA一択。 -
購入チャネル:卸価格に近いルートで購入
百貨店やブランド店では小売マージンが50〜100%乗ることも。業者ルートや裸石販売の活用を。 -
蛍光性:None〜Faint
Strong Blue等の蛍光は市場でディスカウントされるケースが多い。
ダイヤモンドの資産性は「何を買うか」以上に「いくらで買うか」に依存します。同じ1ct D VVS1 3EXの石でも、ブランド宝飾店で200万円で買うのと、裸石で100万円で仕入れるのでは、リセール時の損益が全く違います。購入価格をRapaport基準価格にできるだけ近づけることが、資産性を確保する最大のポイントといえるでしょう。
62026年以降の見通し|今は買い時?様子見?
結論から言えば、「ダイヤモンド市場全体が上がるかどうか」と「あなたの石が値上がりするかどうか」は別の話です。以下の3つのシナリオを参考に、判断してください。
2026年のマーケット環境
2026年時点の市場環境を整理すると、以下のようなファクターが並存しています。
- 主要鉱山(アーガイル閉山、ロシア制裁)の供給制約が継続
- インド・中東の高級消費市場が堅調
- ファンシーカラー(ピンク・ブルー等)の希少性が再評価
- デビアスの戦略的な供給量コントロール
- 世界的な景気減速リスク(利上げの長期化)
- 中古ダイヤの流通量増加(相続・資産整理)
- 関税率によるダイヤモンドの取引相場変動
「買い時」の判断フレーム
以上を踏まえると、以下のような判断フレームが有効です。
🎯 今、買いに動いてよい人
- 2ct以上の高品質天然石を、卸価格に近い条件で入手できるルートがある
- 10年以上の長期保有を前提にしている
- ポートフォリオ全体の5%以下のアロケーションとして位置づけている
- 金の代替ではなく、「金とは別の特性(可搬性・匿名性)」に価値を感じている
- 宝飾品としても楽しめるため、「最悪値下がりしても許容できる」余剰資金である
- 短期(1〜3年)でのリターンを期待している
- 購入チャネルが小売店のみ(卸値の2倍近い購入になる)
- 1ct未満の石を「資産」として購入しようとしている
- 売却時のチャネル・タイミングを調べていない
さいごに
ダイヤモンドは、金のように「誰が買っても資産になる」汎用的な投資商品ではありません。
しかし、「適切なグレード」「適切な購入価格」「長期保有の覚悟」という3つの条件が揃えば、他の実物資産にはない強みを持つポテンシャルがあります。
特に、大粒の高品質天然ダイヤは、地球上で新たに採掘される量が減少し続けている中で、
「有限な自然資産」としての希少性が中長期で再評価される可能性を秘めています。
大切なのは、「雰囲気」や「値上がり期待」で買うのではなく、データと条件を理解した上で判断することと考えます。
本記事がその判断材料のひとつとなれば幸いです。